神戸こどもblog

保育士の資格がとれる専修学校「神戸こども総合専門学院」のブログです。六甲山の西、標高407m、豊かな自然のなかにあります。
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絵本『10このちいさな おもちゃのあひる』

『10このちいさな おもちゃのあひる』(絵本)
エリック・カール(作) くどうなおこ(訳)
偕成社 1890円(税込み)
2005年10月発行
31p 大型変型(縦312×238)厚14mm 上製 700g
ISBN 4-03-327920-2

おもちゃのあひるの、かわいい冒険


 『はらぺこあおむし』でよく知られている
エリック・カールの絵本

 アメリカの新聞に載った記事を読んで、
カールさんは思いついたそうです。
それは、こんなニュースでした。


1992年のこと、
太平洋の真ん中あたりで、おもちゃを積んだ船が嵐にあい、
29000個もの おもちゃが海に落とされたのです。

それから11年後の2003年、
アメリカの海岸に、おもちゃのアヒルがうちあげられた。
11年間、ずっと海の上を漂っていたアヒルたちは、
カールさんの気持ちをひきつけたようです。


冬の渡り鳥 マガモ (記事とは関係ありません)


さて、
絵本のものがたりは、
できたてのおもちゃのアヒルが、
やはり
嵐にあって、船から落っこちるところから始まります。


はこの ひとつが どっすんこ
うみに おちて ざっぶんこ
はこが ひらいて おもちゃの あひるが ころころり
「あひる10こ うみに おちたぞー!」と
せんちょうさんが さけぶ
「あひる10こ うみに おちたぞー!」


おもちゃのあひるたちは、
ちりぢり ゆらゆら はなればなれ


西に行ったあひるは、いるかのジャンプにあい、
東に行ったあひるは、あざらしの吠え声をききます。
北に行ったあひるは、しろくまに声かけられ、
南に行ったあひるは、フラミンゴとにらめっこします。


波をのりこえたり 波まかせに漂ったり、
10このあひる、
1ばんめから 9ばんめまで、
いろいろなドラマがありました。


そして、10ばんめのあひる。


おひさま しずみ あたりは くらやみ
だぁれもいない まわりには
ただ うみと そらだけ
ただ うみと そらだけ


カールさん!
10ばんめのあひる どうなるの?


よくあさ めのまえに あらららら


「ほんとのあひるの家族」に 出会うのです。
 「ほんとのあひる」には 9羽のこどもがいました。


"くわっくわっ!"
あひるの かあさん あいさつしてくれた
"くわっくわっくわっくわっ!"
あひるの こどもも あいさつしてくれた


おもちゃのあひるも加わって、
10羽のあひる、
かあさんのあひるに ついて行きます。

日が暮れるから、
おうちに帰るんですって。

日がすっかり暮れて、
おつきさまが、あひるたちに声をかけました。


"おやすみ!"


かあさんあひるも、
こどものあひるも、
「くわっ!」
と返事をしました。

そこで、
おもちゃのあひるも 返事しなくては……。


絵本の最後のページに
「ここをおしてみてね」
と 書いてあります。
 
さあて、押してみると……。


"くわっこきーこ!"


音の出る絵本でした。


神戸こども

絵本『ゆき! ゆき! ゆき!』

『ゆき! ゆき! ゆき!』(絵本)
オリヴィエ・ダンレイ(作)  たなか・まや(訳)
評論社(発行) 1365円(税込み)
2005年12月発行
32p 中型変型(縦235×263)厚9mm 上製 450g
ISBN 978-4-566-00832-0

ねえ、ぼうや、おそとは ゆき!


さむいさむい夜。
こんなにさむい夜は……。


山深い一軒家。
暖炉のそばでママは ゆりかごをゆする。
ゆりかごのぼうやは すやすや眠る。


暖炉の鍋から白い湯気がゆれている。
聞こえてくるのは、暖炉の火をかきおこす音。
そして、
ゆりかごのぼうやがかすかに動く音。


さむいさむい夜

ママは外気を遮断している重いドアを開けた。
冷たい空気が入ってくる。

ゆき! ゆき! ゆき!
ぼうや、雪が降ってきたよ!


暖炉であたたまった
ママのほっぺも、ぼうやのほっぺも
赤い。
ママはぼうやに毛皮を着せた。

さあ、おそとに行こう!


ゆき! ゆき! ゆき!
外はだあれもいない。

山深い一軒家を 雪は白くしてゆく。


ママとぼうやは ずんずん山へ入ってゆく。
ぼうや、これが雪よ!


「かいでごらん、ゆきの におい」
ぼうやは いっぱいに いきを すう。
「きいてごらん、ゆきの おと」
ぼうやは じっと いきを とめる。

  

本校周辺で撮影 (記事とは関係ありません)


(いと)おしく ママは ぼうやを抱き、
雪とたわむれる。


「ゆきの トロルを つくろうよ」

トロルが出て来るということは
ここは北欧だろうか。

そりに乗ってすべる ぼうやとママ。
こおりで出来た クマにまたがる ぼうやとママ。


遊びつかれて ぼうやはあくびをする。
ふたたび 暖炉の前に ママとゆりかごのぼうや。


ママの あたまが こっくりする。
ぼうやは おやゆびを しゃぶっている。


山深い一軒家は、
いつのまにか 降り積もる雪にうずまっていた。


神戸こども

絵本『どんなに きみが すきだか あててごらん』

『どんなに きみが すきだか あててごらん』(絵本)
サム・マクブラットニィ(文)
アニタ・ジェラーム(絵)
小川仁央(おがわひとみ訳)
評論社 1300円+税
1995年10月発行
32p 変形判(縦253×222)厚10mm 上製 420g
ISBN 4-566-00341-8

水彩で描かれたやさしいタッチの絵本

「すきだよ」が大きくなってゆく

 

チビウサギは デカウサギが 好きです。


そこで、
チビウサギは デカウサギに ききました。

"guess how much I love you"
 「どんなに、きみがすきだか あててごらん」

そんな〜、急に言われても、ねぇ。

だから、
「そんなこと、わからないよ」と デカウサギ。

そこで、
チビウサギは 両手をいっぱい横に広げて、
「こんなにさ」


サザンカ (記事とは関係ありません)


デカウサギも チビウサギが 好きでした。

(そうか、そういうことか……) と
デカウサギは気づいたようです。

「でも、ぼくは、こーんなにだよ」 と、
チビウサギと同じようにしてみせた。

デカウサギは デカいので、
チビウサギの "両手のばし"よりも 大きかった。


チビウサギは、
デカウサギの それよりも
好きだと言いたかった。

デカウサギより、
もっと もっと 好きだよ と
言いたかった。


ネズミモチ


さて、

チビウサギと デカウサギの エール交換が
何度か展開されるのですが、

とうとう
「ぼく、おつきさまに とどくぐらい きみがすき」 と
言い残して、 チビウサギは
デカウサギの腕の中で 眠ってしまいました。

チビウサギは デカウサギに、
いつも 寝させて もらっているようです。


クスノキ (相楽園)


デカウサギは チビウサギを 抱きながら、
「それは、とてもとても、とおくだ」 と 言いました。

おつきさまに とどくぐらいよりも、
もっと好きだと表現するには……。

……

……

……

デカウサギは 考えました。

さて、

おやすみなさいの キスをして、
デカウサギは チビウサギに ささやいた。


「・・・ ・・・ ・・・ すきだよ」
( おつきさまに とどくよりも、もっと好きだって )


デカウサギは、
なんて言ったのかなあ?


神戸こども

絵本『ゆきとトナカイのうた』

『ゆきとトナカイのうた』(絵本)
ボディル・ハグブリンク(作・絵) 山内清子(やまのうちきよこ)訳
ポプラ社 1300円+税
2001年11月発行
64p 大型変型(縦307×230)厚11mm 上製 610g
ISBN 4-591-07020-4
*福武書店より1990年に刊行されたものの復刊。

※現在、出版社では品切れです。
図書館か古本で読んでください。

北極圏の雪原に生きる人たちを描く

スタイルは「絵本」ですが、文字も絵もたっぷりあり、
そのぶんページ数も多く、
読み応え 見応えがあります。

ノルウェー北部、北緯66度33分以北の
北極圏に住む「サーメ語を使う人たち」という意味の
「サーメ」たちの、
冬の暮らしぶりを伝えている絵本です。

サーメたちは
「ラップランド」に住んでいます。

ラップランドの「ラップ」とは、
サーメの言葉で
「北の端」を意味するのだそうです。


ラップランド(赤色の部分)
ウィキペディアより


主人公は
「マリット・インガ」という名をもつ5歳の女の子です。

マリット・インガをはじめ、
女性も男性も、子どももおとなも、
赤い帽子をかぶり、
赤い模様の入った上着(マントかな?)を身につけ、
そして
靴下も赤くて、とても美しい。

そう、サンタクロースのようです。


あたしは まだ五さいですが、
たんじょうびのたびに トナカイをもらうので、
としのかずだけ トナカイをもっています。
(本書より)


たぶん
人間よりトナカイのほうが ずっと数が多いのでしょう。

冬が近づくと、
サーメたちは
トナカイたちを飼育できる場所に引っ越します。

その引っ越しの様子、
トナカイと人間との関係が とてもよくわかります。


きょう
とうさんが トナカイを一とう つぶしました。
にくは もちろん、
かわも ないぞうも だいじです。
すてるところなんか ありません。
すねのかわを はぎながら とうさんがいいました。
 「これで マリット・インガの くつができるね」
(本書より)


※記事とは関係ありません


クリスマスの頃になると、
太陽は地平線の下に沈んだままで、
一日中 日が射さないのです。

どんな暮らしなんでしょうね。
ここにもちゃんと
サンタクロースはやってきます!


冬の夜空にはオーロラが現れ、
雪原をバラ色に染めるのだそうです。
すてきですね。


こんな厳しい自然環境のなかでも、
家族をひとつの単位として
共同生活している人たちがいる。

トナカイは 家族と同じ扱いを受け
大切にされている。

絵本を読みすすめていくと、
太陽が
いつまた現れるのかと 期待する気持ちになります。

やがて その姿はまだ見せないまでも、
太陽は
空をオレンジ色に照らし出すようになります。


あしたは もっとながく かがやいてくれるでしょう。
あさっては もっともっとながく。
まいにち まいにち すこしずつながくなって、
そのうち
あさからばんまで かがやいてくれるようになるのです。
そのころになったら あたしたちは、
トナカイと いっしょに
ひろいひろい こうげんをわたって、
はるのテントむらへ ひっこしていきます。
(本書より)


ラップランドに滞在し、
サーメの人々とともに
7か月暮らした経験をもとにして かかれた作品です。




神戸こども

絵本『ロミラのゆめ』

『ロミラのゆめ ヒマラヤの少女のはなし (絵本)

金田卓也(かねだたくや)文+金田常代(かねだつねよ)絵
偕成社 1300円+税
1982年11月発行
34p 中型変型(縦227×249)厚10mm 上製 400g
ISBN 978-4-03-331070-1

※現在、出版社では品切れです。
図書館か古本で読んでください。

豊かな自然と少女と、美しい絵本。心のプレゼント絵本。


少女ロミラは、朝早く起きて水くみをし、
牛のお乳をしぼり、
やぎたちを山の牧場に連れてゆきます。

その頃はもうお昼になり、
木の実をつんで食べ、草原で少し昼寝をしました。

目をさますと夕焼け空。
急いで家路につき、よく働いたので両親にほめられます。

そしてその夜、すてきなことがありました。


これだけのストーリだったら、よくありそうな話ですね。
しかしこの絵本から、私は2つのことを学びました。



※記事とは関係ありません



お話の舞台は、ネパールの小さな村。
電気が通っている最後の町から
山道を何日も歩いてやっとたどりつける村。
世界の屋根ヒマラヤにある
マチャプチャレ(6993メートル)が見えます。


 天にも とどきそうな ヒマラヤは、
むかしから
かみさまの すむところと
しんじられて います。

 
お話は、この一文から始まります。

ロミラは朝も昼も働いています。
学校には行かないのかな?
と、ちょっと心配しましたが、
絵本を裏返すと、
黒板に向かっている子どもたちと先生らしい人が描かれていました。
ああ、勉強もしているんだ、と、安心しました。


村に朝がやってきて、
そびえるマチャプチャレの中腹に雲がたなびいています。
雲の下には、
朝日に輝く田園と森と一軒の家と水牛と
水牛を連れた一人の男が描かれています。

夜明けなので、
高い空はまだ藍色、
その藍色から朝日に映し出される
地上のやや明るい色へと、
グラデーションがとても美しい。
この絵本の展開を示唆するようです。


やぎたちを牧場に連れて行くとき、
川を渡らなければなりません。

もちろん、橋なんぞありません。
マチャプチャレの氷河が溶けて流れ出した水なので、
凍りそうなぐらい冷たいのです。
ところどころに顔を出している石を渡り歩くのです。




こやぎを抱いてロミラは川を渡ります。


ロミラの うでの なかで、
ふさふさした けに おおわれた こやぎの しんぞうが、
どきどきと みゃくを うっています。

 
あたたかい体温も伝わってくるようです。


やっと 山の うえに つきました。
むしゃむしゃむしゃ、
やぎたちの くさを かむ おとだけが きこえてきます。

 
どれほど静かなのか、想像できますね。


絵本の作者は「あとがき」で

小鳥の声で目をさまし、
動物たちといっしょの生活なんて、
すてきだと思いませんか。

そこで暮らす子供たちは、
どの子もきらきらと輝く目をしています。
過保護に育てられた日本の子供たちには、
想像もできないハードな生活ですが、
いっしょうけんめい生きる姿には深く心を打たれます。

と記しています。


日本の子どもと比較して……という部分は
一般的な見解として受け取りたいと思いますが、
ロミラの働きぶりには
確かに心打たれるものがあります。

なぜでしょう?
それを考えてみるだけでも、
この絵本の値打ちがあるでしょう。

世界中、この地球に、
人がいればそこに子どもは必ずいる。
子どもたちは与えられた環境で、
精一杯生きている。

そういう感慨を持ちました。
学んだことの1つはこのことです。
なんだか当り前のことを言っているようですが、
この絵本にはそういう力を感じます。



 
その「そういう力」を考えてみました。

 ロミラの目も、
水牛の目も、
こやぎの目も、
おとうさんの目も、
おかあさんの目も、
どれも同じに見えるのです。

動物の目は人間の目のように見えます。
はじめは不気味でした。
ずーっと考えて、ああそうか、
これは「かみさま」の目なんだな、と気づきました。


始まりの一文の中に
「かみさま」があります。

草原でロミラが昼寝をしたとき、
クリシュナさまのぶらんこに乗せられます。
クリシュナさまはヒンズー教のかみさまです。

そして、その夜、
ロミラはかみさまから
ごほうびを贈られるのです。


絵本の作者は
「かみさま」を目に描いたように思います。
そうすると
改めて「かみさま」とは何か、
と考えてしまいます。

学んだことの2つめはこのことです。





グラデーションがとても美しい夜明けから、
このお話は始まりました。

お話は、星空を迎えた同じ景色で終わります。

よく練られた構成に感銘を受けました。
 「絵本にっぽん賞」を受賞した作品です。

 
主人公のロミラは、
その村でぼくと毎日楽しく遊んだかわいい女の子です。
ですから、
ここに書かれたことは、
ほとんど実話と考えてもさしつかえありません。

重い水がめを背負うロミラ、
山羊を追うロミラ

小さいながらいっしょうけんめい生きているロミラの姿は、
今もぼくの目に焼きついて離れません。

( 「あとがき」より )


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